円滑な学級経営のための力量形成

「円滑な学級経営のための力量形成」(担当:山中)
[学級の人間関係づくり]

学級の課題構造と他者理解 

「学級では,一日の大半,授業が行われている。したがって,学級の組織化が授業のありようと無 関係ではありえない」(山中, 2017, p.6)

「小学校の教室なら,『朝の会』から始まって,いくつかの授業が給食や掃除をはさんで続き, 『帰りの会』で終わる。ほかに,話合い活動や係活動もある。このような学習や諸活動はすべて 『課題』と言い換えることができる」(山中, 2017, p.6)

一般に課題は,子どもの育ちや学びを促すうえで学校教育にかかせない要素である。その一方で課 題は,それが学級という場で遂行されると,必然的に(一人ひとりの子どもが有している,能力, 知識,意欲などの資源についての)個人差を顕現化させることになる(永田, 2003; 山中, 2009; 山中, 2012; 山中, 2017)

「たとえば,跳び箱という課題は跳べる者と跳べない者を露わにする。もし跳び箱という課題が導 入されなければ明らかにならなかった(かもしれない)自分と他者の違いが浮き彫りにされてしま うのだ。跳び箱は単なる一例に過ぎない。学級では1日にあらゆる課題が遂行され,それが少なく とも1年間継続されていく。つまるところ,児童生徒に自他の違いをつねに突きつける環境,それ が学級なのである」(山中, 2017, p.6)

「このような『個人差の顕現化』は,とりもなおさず他者理解につながる(もちろん,自己理解に もつながる)。したがって,学級における他者理解は,(そのかなりの部分を)学級で遂行される 課題に依存していることになる。そして,課題の多くが教員個々によって設定されるものであるこ とを考えあわせるなら,教員がどのような内容の課題をどのような方法で実践していくかが,学級 のなかでの他者理解(とそれに基づく人間関係のありよう)を規定していると考えられるのであ る」(山中, 2017, p.7)

「経験豊富な教員のなかには,その教員ならではの『授業の型やスタイル』をもっているものも少 なくない。そうした授業の型やスタイルは教科内容を教えるうえで有効に機能するものであって も,それが日々繰り返されることで,児童生徒の特定の側面だけを顕現化させているかもしれない のである。したがって,教員には,自らの授業の型やスタイルが児童生徒の相互理解のありようを 規定している可能性に十分に自覚的であることが求められるであろう」(山中, 2017, p.7)

文献

永田良昭 (2003). 人の社会性とは何か ミネルヴァ書房
山中一英 (2009). 「学級集団と友人関係」をめぐる諸問題への社会心理学的接近 兵庫教育大学研究紀要, 34, 23-34.
山中一英 (2012). 学級の中で友人関係や他者はどのように捉えられうるか? 吉田俊和・橋本 剛・小川一美(編)  対人関係の社会心理学(pp.27-44) ナカニシヤ出版
山中一英 (2017). 学級の集団づくりと人間関係づくりを支える授業の構造 兵庫教育(兵庫県立教育研修所), 69(2),4-7.