学校カリキュラムのデザインと評価

こんにちは。兵庫教育大学教職大学院の伊藤博之と申します。

この動画では、教育方法・生徒指導マネジメントコースの1年次後期に配当されている「学校カリキュラムのデザインと評価」の授業の一部を紹介します。

この授業は、編成経験などの差を考慮して「現職院生のみを対象とする授業」です。そのこともあり「少人数で行う授業」として受講生の参加度の高いものになっています。

内容的には、前半は伊藤が主として担当し、カリキュラム・マネジメントの(特に「三つの側面」を中心にした)理論と実践、加えてそれらが強調される社会的、政治・経済的背景について扱います。

次に後半は、マネジメントの要となる「評価」について、主として奥村が扱うという構成になっています。

さて、「カリキュラム・マネジメント」に関わって、みなさんは、学習指導要領の冒頭:第1章総則の最初の1節を覚えていらっしゃるでしょうか。

1998年版までは「各学校においては」…「適切な教育課程を編成するものとする。」と、学校が教育課程の編成主体であることが唄われていましたね。

それが、2008年版の学習指導要領において、上記のことに加えて「これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする」という一文が加えられました。

さらりと一文が追加されただけに見えますが、このことが各学校の教育課程編成に及ぼす影響はとてつもなく大きいものでした。

それはどういうことでしょうか。

1998年版までは、学校が作る教育課程は、それを通じて何らかの目標が実現されなくても、誰も問題にしませんでした。なぜなら、学校で作るのだとしか書かれていなかったからです。それに対して、2008年版からはその教育課程の掲げている目標を「達成」することが求められるようになったのです。

繰り返しますが、これはとてつもなく大きな変化です。有り体に言えば、今までは何か学校教育(内容)の全体計画を作りさえすればよかった。まさに「画餅」でかまわなかったのです。ところが、2008年版ではそれが覆された。実行できない計画の作成では許されず、それを実行することで掲げていた目標を学校がきちんと「達成」して見せねばならなくなったのです。「画餅」が許されなくなってしまったのですね!!学校に、今までなかった責任が重くのしかかることになったのでした。

そして、そのために一躍スポットライトを浴びたのが「カリキュラム・マネジメント」という概念だったのです。

では、「カリキュラム・マネジメント」とはどのようなものなのでしょうか。

その定義は、学問的、行政的どちらにしても少しずつ変化してきていますが、現行の学習指導要領においては、次のように記述されています。
すなわち「教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと」です。

  1. 教科横断的視点
  2. PDCAサイクルの確立
  3. 物的・人的資源の有効活用

の3つです。
本科目前半では、この3側面に即して、我々がどのようなカリキュラム・マネジメントを行う必要があるのかを、以下のような視点から扱うことになります。

A)理論的吟味
B)実践事例の検討
C)それが求められるようになっている社会的、政治・経済的背景

の3つです。

本科目の第1回から第7回にわたってを前半部として、主として伊藤が担当します。

そこでは、まず、「カリキュラムとは何か」、「それをマネジメントするとはどういうことか」次に、「三つの側面」それぞれに、

「① PDCAサイクルを確立するためには何に留意していかなければならないか」。
「②教科横断的視点で新しい資質・能力を育成するには」。「クロスカリキュラムとしての実践事例を検討してみよう」。
「③物的・人的資源の有効活用をすすめるには」をテーマに授業が行われます。
最後に、「社会的、政治・経済的背景を理解した上であるべきカリキュラム・マネジメントの姿を構想してみよう」と展開することになっています。

実は、この授業で扱っているカリキュラム・マネジメントは、本コース授業系分野でのカリキュラム・マネジメントとして実際に運用されています。

授業系分野では、
「学習指導と授業デザイン」で、主として「授業づくり」の理論と実践、
「授業研究の理論と実践」で、主として「授業の評価と改善」の理論と実践、この2つの授業を一体的なものとして、
ミクロ設計レベルでのPDCAサイクルの充実を科目間連携の中核に据えています。

そうしたメインストリームに対して、本「学校カリキュラムのデザインと評価」は、視点をミクロからマクロに拡張し、さらに、歴史的視点や比較教育的視点を付与することでより「長期的・多角的な視点」でマネジメント活動を考えられるようにデザインされているのです。

科目の紹介は以上です。最後まで視聴していただき、ありがとうございました。