クラスのフェアな決め方ルールを作ろう
協働的な学びを成立させるためには、集団合意形成が欠かせません。同時に集団合意形成こそが、協働的な学びの本質ともいえるのです。
様々な個性をもつ児童生徒が、他者を尊重して認め、しかし大勢に流されることなく、自分の考えを表明でき、さらに必要に応じて自分の考えを修正し、集団全体にとって最適と思われる解にたどり着くまでのプロセス、それが集団合意形成過程です。
学級において児童生徒は、自分たちに関わる重大な集団決定を迫られることがあります。クラス委員や係決め、全員遊びの内容、修学旅行の班決めなど、子どもたちにとって「一大事」の決め事です。
そのような時こそ、多様な意見を共有しつつ合意形成を図る学びのチャンスです。
もちろん、多くの担任が「話し合い」によって合意形成がなされるよう指導しようとするでしょう。しかし、子どもたちに任せていると、収拾が付かない事態に陥ったり、授業時間切れになってしまったり。その結果、「仕方がない。じゃんけんで決めなさい」「くじ引きにしたら?」「多数決を取ろう」となりがちです。
小学校高学年児童に「クラスみんなに関わる大事なことを決めるとき、どのような決め方がフェアか」とたずねると「じゃんけん」「くじ引き」「多数決」そして「話し合い」が出てきます。おそらく、今まで使ってきた決め方が「フェア」だと思っているのでしょう。そこで、再度、問い返します。
それぞれの決め方の「良くないところ」を考えてごらん、と。
無反省に使ってきた決め方、しかし立ち止まって振り返ると、子どもたちも様々なことに気付きます。
「じゃんけんやくじ引きは、運まかせなので、負けたときに納得しにくい」「多数決は1票差で意見が通ることもある」「話し合いはいいけど、時間がかかる。決まらなくていらいらする」「話し合っても、いつも同じ人たちの意見が通る」などなど。
集団合意形成では、決定にいたるプロセスのフェアさが重要です。これを手続き的公正(Procedural fairness)といいます。心理学の公正感研究では、手続き的公正が決定結果に対する納得感を高め、たとえ結果が自分の思うとおりにならなくても受け入れられることが実証されています。同時に、手続きを公正にするために必要な要素(たとえば、レーベンサールの6ルール)が明らかにされています。
今までの決定の仕方に疑問をもった児童たちに、自分たちのクラスで使うフェアな決め方ルールを考えさせましょう。その際、レーベンサールの6ルールを参考にさせるのもよいでしょう。そして、フェアなルールが決まったら、学級会を開いてそのル-ルを使った集団決定を繰り返し体験させましょう。
手続き的公正の研究では、フェアな決定プロセスに参加することで、参加者の自尊心や集団所属感が高まることも明らかになっています。
自分たちが考えたフェアな決め方ルールで、クラスにとって重要なことを決めていく。この協働的な学びは、将来、社会の一員となっていく児童生徒にとって、必要不可欠な学びなのです。
(竹西亜古)
参考文献
Lind, E. A., & Tyler, T. R. (1988) The social phycology of procedural justice. Springer Science & Business Media.
Leventhal, G. S. (1980). What should be done with equity theory? New approaches to the study of fairness in social relationship. In K. J. Gergen, M. S. Greenberg, & R. H. Willis (Eds.), Social exchange: Advances in theory and research (pp. 27–55). New York: Plenum.
吉栖こずえ (2021) 集団決定時の手続き的公正経験が児童の学級アイデンティティと向集団的態度におよぼす効果 令和2年度兵庫教育大学教育実践高度化専攻実践研究成果物