ファシリテーターとしての教師

「協働的な学び」では、資質・能力の育成と共に、実社会の課題を「他者と協働して解決する」ことを学ぶことで、未来 社会を創造する主体としての自覚を促すことが求められています。それに伴って、授業や学級運営を進める際に、グループ・ディスカッションやグループ・ワークを導入する機会も増えています。これらの教育機会を進めるうえで、教師がファシリテーターの役割を担う必要性が求められます。

「促進者」と訳されるファシリテーターは、以前によく見られたような一方的に知識を注入したり考え方を伝えたりするといった姿勢ではなくて、児童生徒間でやりとりをしながら、さまざまな知見を生み出すような関係性を促す役割であるといえます。このような場を作っていくための教師の役割としては、まず児童生徒に話し合いをしたいと思えるような雰囲気や関係作りを進めるということがあります。児童生徒に話すように促すことよりも、教師自身がどのように話すとよいかの見本を示すことも役に立つでしょう。また、児童生徒が話し合いを進める際の雰囲気に直接フィードバックすることもありそうです。

「協働的な学び」を促進する際の教師は、自らの価値観を児童生徒に押しつけてしまうことなく、児童生徒の発言や個々の考えに対する理解と興味をもって、話し合いがさらに促進されることに貢献できるような役割を担わなければなりません。これまでの自分自身の価値観を見直して、それらを教師自身がメタ認知できるような自分自身の考えの整理が必要です。そこでは、児童生徒は自分たちで話し合い、自分たちなりの考えを導き出すだけの力があると信じることができる教師のありようが問われることになるではないかと思われます。

(松本 剛)