自己調整学習もやってみよう

 「個別最適な学び」では、教師が子どもの特性や学習進度等に応じて指導方法を工夫することが必要とされます。

 しかし、それだけでは、先生が自分に合わせて教えてくれるのを待つだけの子どもに育ってしまいそうです。そうならないように、答申では、「子供が自らの学習状況を把握し、主体的に学習を調整することができるよう促す(p.18)」ことが求められます。

 主体的な学びを実現するのに重要となるのが「自己調整学習」です。自己調整学習は、「予見」「遂行」「自己内省」という3つの段階を循環しながら進むといわれています。

 予見段階:学習活動に入る前に、これから何を学習するか目標を立てたり(目標設定)、そのために何をするかを考えたり(方略的プランニング)する。

 遂行段階:複雑な課題を細かく分けて効率よく解決していく方法(課題方略)を実行したり、課題遂行がうまく進んでいるかを折に触れて確かめたり(認知的モニタリング)、といった活動が行われる。

 自己内省段階:予見段階で立てた目標と学習状況を比較して、目標が達成できたかを判断する(自己評価)。達成できれば満足し(自己満足)、達成できなければ、より効果的に行うために学習方法をどう変えればいいかを考える(適応的推論)。そしてまた、次の予見段階につながっていく。

 自己調整学習は、一見すると、“できる子にしかできない”ような難しい活動のように見えます。しかし、すべての段階をいっぺんにできるようにさせようとせずに、一段階ずつ取り組んでいってはどうでしょうか。

 例えば、自己調整学習の遂行段階に焦点を当てた取り組みに、「けテぶれ」という実践があります。これは次のような一連のサイクルからできています。

け(計画):目標に向けて学習計画を立てる。

テ(テスト):計画に従って学習活動を行ったうえで、問題集などに取り組んで自身の実力を自分で測る。

ぶ(分析) :間違いの原因を探り、実力をあげるためにはどうすればいいかを考える。

れ(練習):自分の苦手を乗り越えられそうな具体的な方法で学習を積み重ねる。

 遂行段階で必要となる、<自己制御>と<自己観察>を具体的な行動のステップに分け、わかりやすく表現することで、子どもが自分で遂行段階をたどれるようにしています。

 このようにして、遂行段階がある程度確立すれば、次の自己内省段階やその次の予見段階にも進みやすくなると考えられます。一つひとつの段階をクリアしていくことで、子どもが徐々に自己調整学習のサイクルを自分で回せるようになることが期待できます。

(宮田佳緒里)

参考文献

大島純・千代西尾祐司(編)『主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック』北大路書房、2019.

葛原祥太『「けテぶれ」宿題革命! 子どもが自立した学習者に変わる!』学陽書房、2019.