人を思い込みでとらえること

新学期、新しい子どもたちを担任するにあたって「申し送り」を受けることがあります。

前の学年の担任などから「〇〇さんは、××な性格」「△△さんは、こういう特徴がある」などと、特によく見てあげる必要が感じられる子どもについて、情報共有することが目的です。

人を、その人の性格や特徴で捉えることは便利です。あらかじめ性格や特徴を知っておくと、より適切な対応ができ、より良好な関係が築けるからです。しかし、あらかじめ知ってしまうと、そのことによって本質を見誤ってしまうことがあります。

社会心理学者 H.ケリーさんは、性格の情報があらかじめ与えられると、その人の実際の行動を性格に沿って解釈するということを明らかにしました。マサチューセッツ工科大学で心理学の授業を取っていた学生たちは、ある日、上の図にあるような「来週ピンチヒッターで来る非常勤の先生の紹介文」を配られました。学生たちには内緒でしたが、紹介文には2種類あり「温かい(warm)」と「冷たい(cold)」の1語だけが異なっていて、人によってどちらかが配られたのです。

翌週、ブランク氏が現れ授業をしました。学生たちは授業後ブランク氏に関する質問に答えました。すると「温かい」を受け取った学生たちは、彼と彼の授業を高く評価し、熱心だった・親切だった・また話がしたいと答えました。「冷たい」を受け取った学生たちは、正反対の答でした。受けていたのは全く同じ授業だったのですが。

本人に会う前に、その人の情報、特に中心的な性格に関する情報を得ると、それがその人を見る時の枠組みになってしまいます。「申し送り」は必要なことですが、その子を前にしたときは、申し送りにとらわれず、ありのままのその子を見てあげてください。

文献

Kelly, H. H.(1950) The warm-cold variable in first impression of persons. J. of Per., 18,431-439