見かけも思い込みをつくる

先の「申し送り」に関する話の中で、あらかじめ得られた情報が、その人を見るときの枠組みになるということを言いました。では初対面の人と会ったとき、あらかじめの情報がない場合はどうでしょう?

人は視覚に頼る生き物です。外界からの情報の8割程度を視覚から得ているとも言われています。初対面の時、最初に利用される情報も目に飛び込んでくるもの、つまり「見かけ」の情報です。わたしたちは相手の「見かけ」から、その人の中心的な特徴を取り出そうとします。怖そうな人だな、優しそうな人だな、ちょっと変わった人だな・・・その後、実際に話したり、やりとりしたりすることで、当初の印象が変わることもありますが、最初の「枠組み」が強いと、ケリーさんの実験のようになってしまいます。

社会心理学者のK.ディオンさんは米国で幼稚園の先生を2グループに分けて、片方には「汚れた顔と服の女の子」、もう一方には「清潔な顔と服の女の子」の写真を見せました。はじめてみる女の子の写真です。その上で、それぞれの子が「次のようないたずらをどのくらいすると思うか」と質問しました。結果は、上の図のようになりました。実は、写真の女の子は同一人物で、汚れた方の写真はわざとそのようにしていたのです。

人を見かけで判断してはいけない。教師である人ほど、そのように子どもに伝えるでしょうし、自戒もするでしょう。しかし、人が人をどう見ているかを調べた心理学の研究(対人認知研究)は、人が人に対して多くの思い込みやとらわれをしがちであることを示しています。

文献

Dion, K.(1972) Physical attractiveness and evaluation of children’s transgressions .J.P.S.P., 24,2,207-213.