子どものどこを私は見ている?

ひとりひとりの子どもをしっかり見ることが担任の役目だとよくいわれます。

あなたは「子どものどこを」見ていますか? 表情、行動、服装や持ち物、いろいろな所に気を配っておられるでしょう。それは、子どもという「図」を一生懸命みている状態です。

人間が「ものを見るとき」すなわち、目から入る視覚情報を処理するときの特徴が、心理学では知られています。上の図は有名な「ルビンの盃」です。黒い部分を「図=物体」として見ると、向かいあった人の黒い影が見えます。その時、白い部分は「地=背景」です。次に白い部分を「図=物体」として見ると、黒い「地=背景」に、白い花瓶がみえると思います。

では次に、人影と花瓶を同時に見てください。すると・・・同時に見ることができない、と分かりますか? 人・花瓶・人・花瓶と、ころころ見ている物体は変わりますが、同時に見ることはできません。つまり、目の前の物体を見ることは、それ以外の情報を背景にして、見えなくすることと同義なのです。

これは、子どもを見る場合も同じです。子どもそのものに注目すればするほど、それ以外の情報は見えなくなります。たとえば子どもが良くない行為をした時、その時「図」である子ども自身やその行為に注目すればするほど、「地」である環境や状況は見えにくくなります。

どうすればいいでしょう? 答もルビンにあります。視点をずらせばいいのです。時には、子どもそのものから視点をずらして、その子を取り囲む背景を見ることも大事です。