みんなでやるからサボっちゃう?

集団での作業や活動のとき「全員で一生懸命、取り組みましょう」と言っても、サボり気味の子どもはどこにでもいるものです。何とか全員で目標に向かわせようとしても、一部のがんばる子に頼ってしまうのか、自分がやらなくてもお任せすればいい、といった子どもが見受けられます。

集団作業になると、つい手を抜いてしまう。これを社会的手抜き現象といいます。社会心理学者のB.ラタネさんは、この手抜き現象が無意識のうちに起きることを明らかにしました。実験室に6人を集めて、思いっきり大声で叫んでもらいます。まずひとりずつ叫んでもらい、その音量を測定しました。次に、6人全員で力を合わせて思いっきり叫んでもらいました。ところが、その時測定された音量は、個人の合計を下回ってしまいました。そこで6人にこう言いました。「この音量測定機は、個人の声の特徴を検出してひとりひとりの音量も同時に測れます」と。すると、6人で叫んだ合計音量は、個人の音量の合計値になりました。

実験後にインタビューすると6人の誰もが「わざと力を抜いたつもりはなかった」と言いました。それでも、人は自分以外の人が一緒にやっていて、誰の働きかわからない時には、つい力を抜いてしまうものなのです。

この無意識の手抜きを防ぐ方法も、実験で明らかです。ひとりひとりの作業量が明確になるようにすることです。人は、自分の責任が明確になる場面ではサボらないのです。

目標を設定することで学級はチームに近づきます。ですが、本当の意味でチームになるためには、子どもひとりひとりが自分の役割と責任を感じることが大事です。そして、それが「あなたしか出来ない役割」であればあるほど、その子はがんばれるのです。

文献

Latane, B., William, K., & Harkins, S. (1979) Many hands make light the work: Causes and consequences of social loafing. J.P.S.P. 37, 822-832.