Q2. 「指導の個別化」が進むと「協働的な学び」ができなくなりませんか?
Question 2
「指導の個別化」が進むと、学級やグループといった集団のよさを生かした学習(「協働的な学び」)はできにくくなるような気がします。果たしてカリキュラム・マネジメントの充実と強化によって、そのことが解決するのでしょうか。
Answer 2
ご懸念は当を得ています。 「指導の個別化」を進めると、他の学習者と学習の範囲や進度がズレていきますので、放っておけば個々の児童生徒の学習も孤立化が進んでしまいます。しかし、学習というものは、自分以外の他者(教員、同じクラスやグループの児童・生徒、教材もしくは資料の著者など)の発想や見方・考え方等に共感したり自信をもたらされたり励まされたり、逆に違和感を感じたり反発・反論したりして揺さぶられたりすることを通じて、広がったり深まったりするものです。それゆえ、定期的、もしくは臨機応変に機を見て、ペアやグループ、教室全体で行う「協働的な学び」を行う必要が出てくるのです。個別に行った個人学習が充実していればいるほど、それを持ち寄って交流して行われる「協働的な学び」が充実します。そして「協働的な学び」が充実すればするほど、そこからフィードバックを受けて行われる個人学習もより充実したものになることが期待できるのです。
このように、「指導の個別化」と「協働的な学び」はセットとして考えられるべきものです。日本でもすでに大正期に、たとえば奈良高等女子師範学校附属小学校における「奈良の合科学習」と呼ばれる実践においても、「独自学習」と「相互学習」を交互に行うことによって「自律と協働」を養う教育が展開され、高く評価されました。また、近年、課外に個々の学習を行ってこさせ、学校での授業では「協働的な学び」を主として行うという「反転授業」の試みも注目を集めています。
(伊藤 博之)