Q1. これまでの学校教育のよさを生かして実践すれば「個別最適な学び」ができますか?

Question 1

 「個に応じた指導」が教師視点から整理した概念、「個別最適な学び」が学習者視点から整理した概念だとするならば、それらは同じことを意味しているのですね。これまでの学校教育のよさを生かして実践していけばよいということですね?

Answer 1

「個に応じた指導」については、これまでの学習指導要領でも「個人差に留意した指導(昭和33年)」や「個性を生かす教育(平成元年)」として触れられていました。また学校教育でも、子どもたちの思考を深める発問を重視したり、子どもの多様性と向き合いながら集団としての学びに高めていく実践が行われてきました。これらの良さを生かすことは、「個別最適な学び」を実現するうえで重要であると考えられます。

 一方で、これまでの学校教育では「みんなで同じことができる」「言われたことを言われたとおりにできる」ことを求めすぎるあまり、個性を生かすという理念を十分に実現できないケースもあったようです。例えば、学力差の大きい学級では、どのくらいの学力の子を対象に授業をすればいいか、ということが悩みの種になることがあります。これも、学力の違いは認めつつ、授業では全員が同じペースで同じことをしなければならないという暗黙の前提が、教師の側にあるために生じる問題と考えられます。一見すると、個に応じた指導に見える方法を採用していても、教師の側に「みんな一緒でなければ」という前提がある限り、こちらのケースに陥ってしまう可能性は大いにあります。これを機に、自分は何を前提に授業をしているかを、教師自身が改めて考えてみてもよいかもしれませんね。

(宮田佳緒里)

参考文献

中央教育審議会 『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学び~(答申)』(令和3年1月26日)