Q2. 「協働的な学び」と「個別化」をうまく組み合わせるにはどうしたらいいですか。

Question 2

 「協働的な学び」と「個別化」をうまく組み合わせるにはどうしたらよろしいのでしょうか。具体例を示しながら、教えてください。

Answer 2

教師に求められるのは、次の2つの試みではないでしょうか。

第1に、協働するための課題づくりです。単に他者と一緒に取り組む課題ではありません。一人ひとりの考えの多様性を活かすことができて、他者との関わり合いを通じて一人ひとりが学びを深めることのできる課題です。

第2に、当該課題について子どもが自分のペースで独力で思考する機会を担保することです。このとき、ICTの適切な活用が効果的なケースもあるでしょう。もうこれ以上は考えられないと子どもが思えるようになるまで待つ。あれこれ考えを巡らせた子どもならきっと、同じ課題に取り組んでいる他者に自分の考えを伝えたくなるでしょうし、他者の考えを聞きたくなるのではないでしょうか。こうして子どもの視線は、ごく自然に協働的な学びへと向かうことになるのです。 

つまるところ、「協働的な学び」と「個別最適な学び」は相補的な関係にあります。したがって、両者を往還させることが、一人ひとりの子どもが深い学びに到達するのを助けることになるのです。

とはいえ、教室の中でこうした実践を組み立てるのは容易でないかもしれません。そんなとき、具体的な実践例がヒントを与えてくれるはずです。たとえば、独立行政法人教職員支援機構のウェブサイト(https://www.nits.go.jp/jisedai/achievement/jirei/)には、「アクティブ・ラーニング授業実践事例」として、主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善に取り組んでいる200もの事例が紹介されています。また、一般社団法人教育環境デザイン研究所(2022年4月に東京大学から独立)のウェブサイト(https://ni-coref.or.jp)では、協調学習を引き起こす授業手法の一つである「知識構成型ジグソー法」が、実際の指導案や教材の例をまとめた使い方キットなどとともに詳しく解説されています。 

(山中 一英) 

参考文献 

奈須正裕 (2021). 個別最適な学びと協働的な学び 東洋館出版社 

白水 始 (2020). 対話力 東洋館出版社