生徒指導とキャリア教育

「生徒指導とキャリア教育」

本講義では,小学校から高等学校における生徒指導上の課題への取組みの理論と実践について学習します。

生徒指導にかかわる諸問題は,児童生徒に与える短期的,長期的な影響の大きさを理解して学校全体で取り組む必要があり,未然防止や問題が発生したときの危機対応等も含め,組織的な指導体制の構築と,個別の事例に幅広く対応できる能力の両方が求められています。

今回は,進路指導・キャリア教育の内容からお話しさせていただきます。

現在,キャリア教育の中では育成すべき能力資質として,基礎的・汎用的能力が挙げられています。

基礎的汎用的能力には人間関係形成能力・社会形成能力,自己理解・自己管理能力,課題対応能力,キャリアプランニング能力の4つが示されていて,この4つの能力もそれぞれが色々な資質能力を含んだ包括的な概念です。

基礎的汎用的能力は,分野や職種にかかわらず、社会的・職業的に自立するために必要な基盤となる力と言われています。

能力の具体例をみると,確かにそれぞれが社会的自立や就労に必要そうな力ではあります。

しかし一方で,これらの諸能力をどのようなまとまりで,どの程度身に付けさせるのかは,学校や地域の特色や子ども・若者の発達段階によっても異なると示されています。

この図を見てください。

この図は進学先の学校について,地方と都市で簡略的に示したものです(あくまで特徴を際立たせるための例示と考えてください)。

ある地方では,地域に1つ,保育園幼稚園があり,小学校があり,中学校卒業まで,単学級でクラス替えもなく,みんな同じメンバーで一緒に過ごす,というような地域もあります。高校進学も,全員ではないけれどほとんどみんなが同じ高校に進学していく。

一方で,都市部のほうでは,校区内にいくつもの保育園や幼稚園があり,公立私立の小学校があり中学校があったりします。同じ幼稚園から小学校に行く子は多くなく,小学校から中学校への進学の時にも,いくつもの進路に分かれます。ある学校に進学してくるのは,いくつもの小学校あるいは中学校からの混成になります。

異なる生活背景や,異なる教育目標を持つ学校では,基礎的汎用的能力の育成の仕方やその軽重がそれぞれ異なるのは自明なことです。それぞれの学校や学年,学級の事情を踏まえて育成の目標となる具体の能力を設定し,育成するための工夫をする必要があります。キャリア教育の実践には,キャリア理論に基づいた教育を,その学校その学校の特色に合わせて組み合わせ立案できる力が求められるのです。

参考文献

中央教育審議会  (2011) 今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)