「話し合い」は、いつも良い結果?

前回、子どもたちに集団決定をさせるとき「決め方を問い直す」必要があることをお話しました。「くじ引き」や「じゃんけん」といった決め方で、思い通りにならなかった子は「納得する」のではなく「あきらめる」のです。では誰しもが納得するためにどうすればいいかと問うと、多くの子どもは「話し合えばいい」と答えるでしょう。「話し合い」もまた、学校生活では星の数ほど使われる“きれいな”言葉です。「話し合いによる決定」は非常に良いことだ、民主主義の基本だし三人寄れば文殊の知恵ともいう。と、大人も含めて多くの人が思っています。

「話し合い」は常に良い結果、正しい決定をもたらすのでしょうか? 残念ながらそうではないようです。社会心理学者のジャニスさんは、国家レベルの決定・判断をしたトップエリートたちの話し合いを分析し、大失敗となった軍事行動や外交介入の多くで、集団浅慮という現象が生じていたことを発見しました。冷静に見ると成功するはずもない作戦を“いける・いける!”とばかりに決定したのです。集団浅慮が起きると、話し合いはとんでもない結論に至るのです。

集団浅慮が起きる前提条件のひとつは、メンバーの関係性にあります。仲の良い似たもの同士が集まっている場合と、逆にひっくり返せないほどのパワーの差がある場合です。前者は仲良くしたいがために同調が生じ、後者はパワーに対する服従が生じます。いずれも意見の均質化が促進され、ある方向に意見の流れができると、その流れを止めたり逆にすることが極めて難しくなります。その結果、流れは同質の意見を沢山あつめた奔流になって一気に結論になだれ込むのです。

子どもたちの話し合いでも集団浅慮はしばしば起きます。嫌われたくないから・仲良くしたいから同意する。あの子には逆らえないから自分の意見は言わない。最初は違和感があっても、周りがみんな同じ意見になっていくと、なんとなくそうかもしれないと感じてくる。違う意見を持ち続けるのはしんどいので、もうどうでもいい気分になる・・・・。

では、どうすれば集団浅慮を避けられるのでしょう。その答は次回のお話で。

文献

Janis, I. L.(1982) Groupthink: Psychological studies of policy decisions and fiascoes. Boston, USA. Houghton Mifflin.