6.「評定」は子どもに何を伝えているのか

子どものころ、少しドキドキしながら通知表を受け取り、周りから手元を隠しながら開いたことを覚えています。成績が返ってくるときの、あの場の空気感を思い出す方もいるのではないでしょうか。
学校現場において、成績や通知表のつけ方は、日々考えることの多い仕事になっています。
通知表は、子どもや保護者に学習状況を伝える役割があり、関心が高いものです。また、成績は入試や進学に関わる重要な情報でもあります。
こうした成績の扱い方については、現在もさまざまな工夫や検討が続けられています。
たとえば、通知表の在り方や内申書の扱いについては、自治体ごとの状況も踏まえながら、見直しの議論や動きが見られます。
一方で子どもたちは、自分の学習や行動が成績にどう反映されるのか、何が評価・評定されているのかを、多かれ少なかれ意識しながら学校生活を送っています。
こうしたなかで、評価と評定のされ方、とりわけ評定は、子どもの学び方や学校での過ごし方にさまざまな影響を与えています。
イメージされる具体的な場面をいくつか挙げてみましょう。
・板書が定期テストに出される内容だと分かると、その箇所を勉強して覚える
・提出物が成績に反映されると分かると、提出することに意識が向きやすくなる
・振り返りが採点されると分かると、何が求められているのかを考えて書くようになる
・評価・評定がされない時間は、「自由な時間」と受け取られやすくなる
・評価基準を知ると、学習の目安としてその基準が意識されるようになる
・一人ひとりの学習によりそって評価が行われると、今どこまでできていて、次に何をすればよいかを確かめるためのものとして受け取られやすくなる
こうした例の中には、評価や評定を通して、子どもが「学校」という場でどのように過ごしていくのかを学んでいるものがあります。
教師が意図して教えている内容とは別に、学校生活の中で身についていくこうした学びは、「隠れたカリキュラム」と呼ばれます。
教師が何を評価し、それをどのように評定に用いるかは、子どもの学習や行動に、さまざまな形で影響していきます。
子どもの関心や注意が限られていくこともあれば、学びの進め方を考えるきっかけになることもあります。
授業は子どもと教師が一緒につくっていくものだ、という受け止め方につながることもあります。
評価、とりわけ「評定」は、単に学習の結果を記録する取り組みではありません。
「どう学べばよいのか」や「この学校では何が大事にされているのか」といったメッセージが、日々の学校生活の中で子どもたちに伝わっていく仕組みにもなっています。
【文献】
小田智博・國分一哉・藤本和久編著(2023)『通知表をやめた。:茅ケ崎市立香川小学校の1000日』日本標準
田中耕治・西岡加名恵編(2024)『内申書を問う:教育評価研究からみた内申書問題』有斐閣
