キャリア教育【一人ひとりの自己形成に合わせた学びを】

平成29(30)年に出された小・中・高校の新学習指導要領 総則によると、キャリア教育について以下のように示されています。

児童(生徒)が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に 向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう,特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。(下線部筆者)

各学校段階において,これまで学んできたことと、これからの学びあるいはその先の職業等とのつながりが見通せる教育の在り方が求められており,学校教育と自己実現,自己形成(キャリア形成)とのつながりを意識させる内容となっています。

現在のキャリア教育の中で育成が求められている基礎的・汎用的能力は、どのような役割や職業であっても基本的に必要となる能力資質とされており、学校教育の中で少しずつ身につけていくことができるよう工夫することが求められています。一方で,学校教育現場での悩みの1つに,基礎的汎用的能力が非常に広範な資質・能力群であるために、何をどのように身につけさせたら良いか、という目標が立てにくいということがあるかもしれません。

そもそも自己実現のゴールは千差万別であり、どのような役割を担うか、どのような職業等を得るか,個人ごとに異なる自己形成過程を経るわけです。ある時点のある児童・生徒にとって,重要な能力・資質,あるいはそれほど重要でない能力・資質というのはありうるでしょう。また,この能力・資質は、教科に関する知識のような画一化された育成の仕方はありません。例えば,特別活動の1つ,運動会のような学校行事で、児童はリーダーシップの力が促され,別の児童は課題対応の力が促される、ということがあり得ます。そのため,教師を含む子どもの自己形成を支援する者は,子ども一人ひとりの自己形成の方向に合わせた個別最適な学びを支援していくことが求められます。

(森本 哲介)