「行儀作法」は特定の職業の技能

  そもそも、「行儀作法」というものは、日本において上流階級(武家やそれに準じるもの(豪商など))において求められるものであって、それ以外の一般庶民には贅沢品、無用の長物でしかないものでした。

  生産性がまだ低い社会かつ身分制社会であった江戸時代においては、一般庶民は「行儀作法」に気を遣う余裕は乏しく、また「分不相応」なものでしかありませんでした。「行儀作法」ばかりではありません。家や地域共同体で求められるルールやマナーについても、いちいち(時間をとって)教えられるような余裕を多くの庶民は持ちませんでした。

  それゆえ、家庭では「行儀作法」の教育はなされず、武家や商家、職人のところに奉公に出てはじめて、「行儀作法」が職業技術の一つとして「厳しく」教え込まれることになったのです。