「しかる」以外に行動を抑える方法

抑制したい行動を「しかる」ことで抑えても、教師の見ていないところで再発する。

以前「しかる」ことによる行動の抑制が弁別学習によって無に帰するというお話をしました。(「しかられる手がかり」=第1期参照) 「しかる」ことは、子どもの「行動をしたい」という気持ちを外的な罰で抑制することです。子どもの内面を変えることにはなりません。しかし、認知的不協和理論を用いると、子どもの内面を変えることで行動抑制が可能になります。

アロンソンさんとカールスミスさんの実験をご紹介しましょう。実験参加者は幼稚園児です。子どもは実験者と一緒にプレイルームで5つの玩具を使って遊びます。そのあと、その5つを好きな順に並べさせます。そこで実験者は「子どもが2番目に好きな玩具」を指さして言います。「先生は用事をすませに別の部屋に行ってきます。先生がいない間、このおもちゃと遊んではいけません」 この後、条件操作がなされます。強い罰の条件では、恐い顔を作って「遊んだらとても怒る」と言います。弱い罰の条件では、困った顔で「遊んだら怒るかも」と言います。加えて統制条件では、玩具そのものを先生が持って行ってしまいます。不在の間、子どもが当該の玩具と遊んでいなかったことはモニターで確認しておきます。

一定時間たって戻ってきた先生は「2番目に好きな玩具」を含む5つの玩具で、また遊ばせます。その後、子どもに再度、玩具を好きな順に並べさせたのです。すると・・・。

複数の子どもの結果をまとめると、強い罰の条件と統制条件では、当該玩具の好きな順位が変わらないか、上がっていた(1位か2位)子が多かったのに対し、弱い罰の条件では、下がっていた(3位以下になった)子が多くなったのです。つまり、弱い罰の条件では「好きだった玩具の魅力が下がる」という現象が生じたのです。

弱い罰では「このおもちゃが好き」と「このおもちゃで遊ばなかった」という不協和を十分に減らすことができなかったのです。なので、減らし切れなかった不協和を、その玩具に対する魅力度を下げることで解消したのです。「ボク、なんで、このおもちゃで遊んでないのかな・・・そっか、あまり好きじゃないからだ」

「遊んでない」という自己の行動がまずあって、それを正当化する認知「好きじゃない」が生じるというのです。行動が先になって、認知を作り出す。認知的不協和理論のエッセンスがここにあります。

Aronson, E. and Carlsmith, J. M. Effect of the Severity of Threat on the Devaluation of Forbidden Behavior. Journal of Abnormal and Social Psychology 1963, Vol. 66, No. 6, 584-588.