「優れた教育実践者」と「優れた教師教育者」

プロスポーツの世界で,スーパースターだった選手が指導者として必ずしも成功しないというケースが時折見られます。「名選手,名監督にあらず」などという言葉もあるようです。

これはなにもプロスポーツの世界に限ったことではなく,教師教育の世界でもあてはまることかもしれません。私たちはこれまで,優れた教育実践をする教師(「優れた教育実践者」)ならば,若手教師を育てるのにも秀でた教師(「優れた教師教育者」)であると,(もしかすると安易に)前提してきてはいないでしょうか。「名選手,名監督にあらず」という言葉は,こうした前提を問い直すよう私たちに要請しているのかもしれません。「優れた教育実践者」と「優れた教師教育者」に求められる職能は同じなのか異なるのか,異なるとすれば両者を区別する力量は何なのか。いま,こうした問いを精緻に検討することが求められているのです。

参考文献

山中一英 (2011). イングランドの教員養成と教職大学院の可能性 生徒指導研究, 22, 51-53.
山中一英 (2014). 新人教員教育における論点と展開の可能性―イングランドの‘Masters in Teaching and Learning’に関する複眼的考察― 日本教師教育学会年報, 23, 114-122.