7. 「主体的に学習に取り組む態度」を評定に用いない、という提案

 

最後に、コラム0で触れた今後の学習評価の方向性について、あらためて考えます。

2025年7月4日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会において、今後の学習評価の在り方について重要な提案がなされました。

なかでも注目を集めたのは、「主体的に学習に取り組む態度」を各教科の評定に用いない、という提案です。

提案のポイントを簡単に整理すると、次のようになります。

・現在の「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という観点別評価・評定の枠組みから、「主体的に学習に取り組む態度」を外す

・これまで、①「主体的に学習に取り組む態度」(観点別評価と評定)と②「感性、思いやりなど」(個人内評価)に分けて扱われてきたものを、「学びに向かう力・人間性」として整理する

・「学びに向かう力・人間性」については、各教科の評定を出すのではなく、個々の子どもの成長をみとる「個人内評価」として扱う

詳細は実際の資料をご覧ください。

この会議のあと、すぐにニュースとして取り上げられました。この提案に対して、筆者が会った方の間でも、またネット上でも、さまざまな意見がありました。

では、この提案が実現した場合、何が変わると予想されるでしょうか。

以下では、これまでのコラム(1~6回)と特別部会の資料をもとに、今回の提案の意図や、考えられる影響について整理してみます。

・今回の提案は「態度」を軽視するものではなく、むしろ評価としては大切に位置づけたうえで、各教科の評定には用いないことで、その扱い方を見直そうとするものです(コラム2)。

 観点別評価における「ABCで成績を出す」という扱いをやめて、個人内評価として総合所見欄などに反映することが想定されています。

 なお、部分的に「思考・判断・表現」に付記するといった案も示されています。

・数値化する「評定」から外れることで、態度を客観的に評価しなければならない、という縛りが緩まると考えられます(コラム3)。

 それぞれの教師が、子どもの姿を主観的にみとり、話し合いを通して共有するなど、多面的な評価がしやすくなる可能性があります。

・「挙手の回数」や「提出物の有無」といった限られた指標で態度を評価・評定することに向かいやすかった状況から、より柔軟に評価方法を選べるようになることも期待されます(コラム4・5)。

 評価の場面を精選し、あえて評価しないという選択も広がるでしょう。

・子どもにとっても、挙手や振り返りを「評定の対象になるから行う」という受け止め方が和らぐ可能性があります(コラム6)。

 日々の振り返りで、本当に考えたことや感じたことを表現しやすくなり、自己評価や授業改善にもつながることが考えられます。

 

今回の提案には、上記のように、評価や評定のあり方を見直すことから生まれる、いくつかの前向きな変化が考えられます。

さて、今回の提案に対しては、「態度」を各教科の評定に用いないことで、これまで担ってきた役割が弱まり、授業の進め方が難しくなるのではないか、という懸念も聞かれました。

たとえば、「テストで点数が取れなかった子どもを、態度や頑張りで成績に反映できなくなるのではないか」といった意見です。また、生徒が提出物を出さなくなったり、授業を聞かなくなったりするのではないか、というような声もありました。

実際、態度の評定がこのような機能を持ちうることは、筆者自身も理解しています。

授業を成立させたり、子どもを支えたりするために、そうした役割を担ってきた面があることも確かでしょう。

しかし一方で、態度の評定が、子どもの学びを形だけのものにしてしまいやすい、という問題にも目を向ける必要があります。

前回の学習指導要領改訂では、「主体的に学習に取り組む態度」へと名称を変えるなど、さまざまな工夫が重ねられてきました。

それでもなお、評定として扱うことの難しさは残り続けてきました。

今回の提案は、そうした試行錯誤を否定するものではありません。

「態度」を完全になくすのではなく、数値化する「評定」という形からはできる限り外し、個人内評価として一人ひとりの成長をみとり、支えていこうとする方向への整理だと言えます。

これまで述べてきた点や、先に挙げたメリットを踏まえると、

本来の教育評価の目的や機能から考えて、今回の提案には、課題もありつつ、前向きに受け止めることができる点の方が多いと筆者は考えています。

みなさんは、この提案を、教育評価のあり方としてどのように受け止められるでしょうか。

【文献】

中央教育審議会(2025)「論点資料(9)豊かな学びに繋がる学習評価の在り方~過度な負担を生じさせない在り方との両立~」(令和7年7月4日 教育課程企画特別部会 資料1)

URL: https://www.mext.go.jp/content/20250711-mxt_kyoiku01-000043568_03.pdf(2026年1月13日確認)