教員Voice 黒田昌克先生インタビュー

小学校プログラミング教育を支える

 

 

――学生生活を振り返って、改めて思い出される印象的な出来事はありますか?

大学時代は理科教育が専門でしたが、まじめな学生ではなく、あまり勉強しなかったですね。卒業研究では、ビオトープを作って、その中で生態系を調べるという研究といえるのかよくわからないことをやっていました。卒業した後に兵庫県でしばらく教師をしていましたが、30歳台になり授業や仕事がある程度できるようになってきた中で、自分の仕事や授業について限界のようなものを感じ始めていたので、派遣制度を使って本コース(旧:授業実践開発コース)に来させてもらいました。教職大学院では、大学時代の反動もあって、自分なりに一生懸命学修や研究に取り組みました。ここでプログラミング教育について研究している中で、教職大学院の2年間では研究を終わらせることが難しいと思い、博士課程に進学したいと思うようになりました。フルタイムで働きながらの博士課程は大変でしたが、指導していただいた先生方のおかげで何とか学位を取得することができました。

 

――現在はどのような生活をされていますか?例えば、休日はどのように過ごされていますか?

趣味はいろいろとあるのですが、最近は忙しくて休日も仕事をしたり休息したりで終わっています。唯一の癒しは飼っているペット(爬虫類)との触れ合いですね。

 

――先生の研究分野と具体的な研究内容を教えてください。

私の専門としては技術教育や情報教育で、その周辺にゲーミフィケーションやICTの活用があります。最近では、STEAM教育とAI関連のことを多く行っています。生成AIを教育の中でどう位置づけていくのかにも興味があります。博士論文では、小学校プログラミング教育における技術イノベーションに着目した授業実践の開発に取り組みました。最近注目されているSTEAM教育につながるような内容になったと思います。

 

――先生の書かれた論文で代表的なものを教えてください。

「技術リテラシー育成の観点から日常生活の問題を解決する学習活動を取り入れた小学校プログラミング教育の実践とその効果」(『日本産業技術教育学会誌』61(4), 305 – 313)です。これは博士論文の中心の論文です。学校でプログラミング教育に取り組むことで、日常の課題を解決していくための技術イノベーション力を身につけていくという実践論文ですね。この論文は一番時間をかけて書いた思い入れのある論文です。

 

――先生のご専門や研究は学校や教育現場でどのように役立つものですか?

役に立っているかよくわからないというのが正直なところです。ただ小学校の先生にとってプログラミング教育はまだまだよくわからないものなんだと思います。昔はなかった内容ですし、まだ教員養成でも十分に取り扱われていません。学校や現場の中にやり方がわからない、そもそもやる意義がわからないという意見があるのに対して、そこにアプローチしていくのが現場経験のある私の役割かなと思います。技術教育の分野では当たり前ですが中学校技術教育を専門とされている研究者が多い中で、私は小学校における技術教育に関連する領域で何かの役に立っていくことができればと思っています。

 

――先生の研究分野や研究領域に関わって、おすすめの一冊を教えてください。

オードリー・タン他『PLURALITY 対立を創造に変える、協働テクノロジーと民主主義の未来』(2025年、ライツ社)です。民主主義の行き詰まりや閉塞感を、デジタル技術を用いて変革していく可能性やそのヴィジョンを示した本です。技術的な内容の本ではありますが詩的な言い回しも多くて、読んでいて面白いです。私のようなにデジタル技術に価値を感じている人にとっては、多くの示唆や提案を与えてくれる本になるのではないかと思います。もちろんデジタル技術がすべてを解決するわけではないですが、デジタル技術を少しでも良い未来を作るために活用していくことは重要だと考えています。

 

――最後に、先生が考える本コースの魅力を教えてください。

自分自身が学んだコースでもあるので、本コースは非常に魅力的なコースだと思っています。長くなるので教育方法の分野に限っていうと、汎用性が高く、どのような校種、どのような教科にでも応用できることを多く学べることが魅力だと思っています。個人的には現職の教員とストレートの学生がちょうど半々くらいの割合で在籍していることが多いように感じるので、お互いにとって刺激を受けながら学べるということは私自身、本コースで学んで貴重な体験だったと感じています。

 

インタビュー実施:2025年9月4日

インタビュー:松田充