教員Voice 徳島 祐彌先生インタビュー  

 

多様なアプローチによる理論と実践の歩み寄り

 

――学生生活を振り返って、改めて思い出される印象的な出来事はありますか?

院生の時は、まず研究テーマを探ることに時間がかかり、自分のやりたいことがなかなか定まらず、色々模索しながら家と学校を行き来する毎日でした。学部生のころはハンドボール部に入っていて、およそ週5日で練習をしていたと思います。それで、あまり勉強には力を入れていなかったです。それでも4年生の時に卒論や勉強のために早めに引退をして、 そこからはほとんど関わっていないです。私のいた学部は小さく、学部生同士はとても仲が良かったのを覚えています。今はもうほとんど連絡取ることはないですが、当時は勉強の面でも生活面でも色々助け合っていた気がします。大学院については、同じ研究室を出ていることもあり、繋がりがあります。

 

――現在はどのような生活をされていますか?例えば、休日はどのように過ごされていますか?

あまり聞いても面白くないのですが、土曜日は大学で授業準備など何かしら仕事をしていることが多いです。日曜日は家にいるか、加東、加西、三木あたりでご飯食べたりお店に行ったりする程度で、そんなに出歩かないですね。体育を学んでいるということもあり、なるべく運動はしようと思いながらも、あまりできていない状態です。

 

――先生の研究分野と具体的な研究内容を教えてください。

博士論文では、アメリカにおける体育カリキュラムを研究しました。日本の学校体育(教科)は、球技、武道、器械運動などに分かれていますが、どういう理屈でこの領域なのか、それを学校で扱う理由は何かなどが最初の関心でした。日本には学習指導要領があり、種目や内容が大きく定められています。その点、アメリカでは、フィットネス教育のカリキュラムなどが考えられています。もちろん種目をベースにスポーツ教育を考える人もいますが、そのようなことを原理的に考えられると思い、アメリカに注目しました。

本学の教職大学院では、教育評価についての授業を担当しています(本コースでは、授業実践や学校カリキュラムの科目を主に担当しています)。私の所属していた研究室が、特に教育評価を専門的に研究しているところだったので、 教育評価については一通り学んできました。

また、「エビデンス」にも関心を持っています。最近、学校の先生も、データサイエンスや統計の知識を身につけた方がよいとお聞きします。それについては私も理解できるのですが、実践現場でデータを出すことが、どのようによい実践に繋がるのかということを考えています。個人的には、先生同士で子どもの作品を解釈し合うといった活動が、教師の力量にとっては大事ではないかとも考えています。

 

――先生の書かれた論文で代表的なものを教えてください。

たとえば「Graham et al. による「スキル・テーマ」カリキュラムの検討:小学校の「体つくり運動」のカリキュラム設計を考えるために」があります。先ほどお話しした関心に近く、体つくり運動を充実させるにはどうしたらよいかについて、理論的な枠組みをアメリカでのカリキュラムをもとに検討したものです。

 

――先生のご専門や研究は学校や教育現場でどのように役立つものですか?

小学校と共同で算数の評価課題を開発したり、パフォーマンス評価の研修の講師を担当したり、「思考力・判断力・表現力」や「見方・考え方」を育てていくための単元や評価の在り方について一緒に考えたりしてきました。「逆向き設計」という考え方に取り組まれた学校に(他の先生方と)入らせていただき、読書会などを通して一緒に理解を深めたりもしました。

 

――先生の研究分野や研究領域に関わって、おすすめの一冊を教えてください。

石井英真先生の『授業づくりの深め方:「よい授業」をデザインするための5つのツボ』(ミネルヴァ書房、2020年)という本です。目標・評価のこと、教材づくり、授業の流れ、今求められている資質・能力、主体的・対話的な学びなど、それらをどう捉えたらよいかが一通り入っています。

 

――最後に、先生が考える本コースの魅力を教えてください。

2つあります。1つは研究内容についてのアプローチの多面性です。たとえば、いわゆる教材開発ではなく、学級経営、生徒指導といった側面から授業を考える研究も想定されます。集団ゼミでは、授業実践と生徒指導の両方の観点からの議論ができます。こういった内容面での多面的なアプローチをとりやすいことが良さだと考えています。もう1つは方法面で、量的に研究を進めていって結果を出すのも一つですし、実際の授業はどうであったか、その1時間で子どもの何がどう変わったのか、その意味を考えることも重要だと思っています。院生の方が、研究につまずいたり行き詰ったりしたときに、アプローチの違う先生に話を聞けたり、別の進め方を提案してもらえたりするのが、本コースの強みだと考えています。

 

インタビュー実施:2023年12月1日

インタビュー・写真:安齋律子、中川清博